偏見おじさんの 知的な痴的な偏見エッセー

@偏見おじさん said「偏見」という言葉に対する偏見を一旦忘れて。 偏見=物事のひとつの見方という立場から始めないと、何も始まらない。

第376回 昭和の子供 論〜山田太一「大人になるまでガマンする」

80年代後半、子供にスポットが当たったドラマがあった。

うちの子にかぎって(84)、毎度お騒がせします(85)、ママはアイドル(87)、パパはニュースキャスター(87)。

大人になるまでガマンする

大人になるまでガマンする


当時おれは小学校高学年と、まさにドラマの子供たちと同年代だったが、そういったスノッブなドラマなど見せてもらえなかった。ほのかな憧れの記憶だけがうっすらあったところ、「パパはニュースキャスター」を観た。

この時代。汚い暗いとされていた、ババアもプロレスラーも隠し子も浮気も不倫もやりチンもやりマンも強引に消毒され、フラットで明るい「同じ棚」に並べられ、消費されていた。
ミー子かハー子かというほどミーハーな女の子たちは、背伸びしている。大人のアクセサリーとしての位置を獲得する子供。大人目線の子供。恥とか可愛げのない世界。ドライ笑=イケてるという。

セーラー服通り (双葉文庫―名作シリーズ)

セーラー服通り (双葉文庫―名作シリーズ)

一方、山田太一「大人になるまでガマンする」(86)。
山田太一は60年代からテレビドラマに関わる。一貫して、例えば「岸辺のアルバム」(77)のように、「あったかホームドラマに疑問を呈す(壊す)」作品を描いてきた。
そんな山田太一が子供ブームにあってどういう回答を出したのか。

例えば「モモ」のようなイノセンスとグレイマンの二項対立を予想した。

しかし蓋を開けると、どうしうもなくリアルな子供ライフだった。ジュブナイルという横文字は似合わない。産まれた環境はどうしようもない。恥と憧れに満ちたありのままの子供の世界。
小学五年生男子。3人。飲み屋の息子、一流会社の息子、転校生。受験戦争。ちいさな恋心。
家族ゲーム」の受験生、宮川一朗太が家庭教師役なのが興味深い。飲み屋の夫婦は加藤健一と泉ピン子。一流企業夫婦は平田満大谷直子
ドラマの映像は残念ながら見ることができない。CSのリストにもないしもちろん商品化もない。テープを上書きしてしまったのだろう。だいたい配役から情景を再現することはできるのだが。

しかしどうしてこんなに子供の気持ちがわかるのか?
本のあとがきに、山田太一「夜遅くまで電車で塾通いをする子供を見かけたことと、当時出会った子供の詩に触発された」とある。
実際物語は飲み屋の息子の弟(小学二年生)の書く詩がポイントとなっていた。まだ半分夢の中の、支離滅裂な詩。

おれは唸った。さすがは時代と寝る脚本家。名回答。

すき好きノート

すき好きノート

全体的には浮かれてる感じがある。加藤健一と泉ピン子のイチャイチャするパターン(オードリーの「嫌いだったら一緒に漫才やってねえよ」エヘヘ ウフフ 的な)があり、山田太一作品では他にみたことがない。