第376回 昭和の子供 論〜山田太一「大人になるまでガマンする」
80年代後半、子供にスポットが当たったドラマがあった。
うちの子にかぎって(84)、毎度お騒がせします(85)、ママはアイドル(87)、パパはニュースキャスター(87)。
- 作者: 山田太一
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 1986/04
- メディア: 単行本
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当時おれは小学校高学年と、まさにドラマの子供たちと同年代だったが、そういったスノッブなドラマなど見せてもらえなかった。ほのかな憧れの記憶だけがうっすらあったところ、「パパはニュースキャスター」を観た。
この時代。汚い暗いとされていた、ババアもプロレスラーも隠し子も浮気も不倫もやりチンもやりマンも強引に消毒され、フラットで明るい「同じ棚」に並べられ、消費されていた。
ミー子かハー子かというほどミーハーな女の子たちは、背伸びしている。大人のアクセサリーとしての位置を獲得する子供。大人目線の子供。恥とか可愛げのない世界。ドライ笑=イケてるという。
- 作者: つづき春
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2002/06
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一方、山田太一「大人になるまでガマンする」(86)。
山田太一は60年代からテレビドラマに関わる。一貫して、例えば「岸辺のアルバム」(77)のように、「あったかホームドラマに疑問を呈す(壊す)」作品を描いてきた。
そんな山田太一が子供ブームにあってどういう回答を出したのか。
例えば「モモ」のようなイノセンスとグレイマンの二項対立を予想した。
モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)
- 作者: ミヒャエル・エンデ,Michael Ende,大島かおり
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1976/09/24
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しかし蓋を開けると、どうしうもなくリアルな子供ライフだった。ジュブナイルという横文字は似合わない。産まれた環境はどうしようもない。恥と憧れに満ちたありのままの子供の世界。
小学五年生男子。3人。飲み屋の息子、一流会社の息子、転校生。受験戦争。ちいさな恋心。
「家族ゲーム」の受験生、宮川一朗太が家庭教師役なのが興味深い。飲み屋の夫婦は加藤健一と泉ピン子。一流企業夫婦は平田満と大谷直子。
ドラマの映像は残念ながら見ることができない。CSのリストにもないしもちろん商品化もない。テープを上書きしてしまったのだろう。だいたい配役から情景を再現することはできるのだが。
しかしどうしてこんなに子供の気持ちがわかるのか?
本のあとがきに、山田太一「夜遅くまで電車で塾通いをする子供を見かけたことと、当時出会った子供の詩に触発された」とある。
実際物語は飲み屋の息子の弟(小学二年生)の書く詩がポイントとなっていた。まだ半分夢の中の、支離滅裂な詩。
おれは唸った。さすがは時代と寝る脚本家。名回答。
- 作者: 谷川俊太郎,装画:安野光雅
- 出版社/メーカー: アリス館
- 発売日: 2012/10/18
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全体的には浮かれてる感じがある。加藤健一と泉ピン子のイチャイチャするパターン(オードリーの「嫌いだったら一緒に漫才やってねえよ」エヘヘ ウフフ 的な)があり、山田太一作品では他にみたことがない。