第390回 詩 論〜山田太一と高田渡の霊界交友録
山田太一「異人たちとの夏」、高田渡「ブラザー軒」。
ともに、この世とあの世の境界がふわっと消えて、すうっと死者が迷い込む、真夏のファンタジーホラー。浮世の縛りが存在しない世界。
- アーティスト: 高田漣
- 出版社/メーカー: キングレコード
- 発売日: 2015/04/15
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高田漣は「ブラザー軒」を歌う時、菅原克己による詩の世界に引き込まれ過ぎると歌えなくなってしまうので苦労したという。例えば「芝浜」のような磁力のある厄介な物語世界。
- アーティスト: 高田渡,高田渡&ヒルトップ・ストリングス・バンド,吉祥寺グループ,高田漣
- 出版社/メーカー: キングレコード
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そういえば似ている、談志と渡。しかも、同じく高田姓の高田文夫は談志の弟子。高田漣がビバリーを聴いているという話は、妙に合点がいくのである。
これが江戸の風というやつなのか。
- 作者: 立川談志
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高田渡はまた、「夕焼け」で吉野弘の詩を歌う。
山田太一は作中でたびたび吉野弘を引用する。
夕焼け
http://m.kget.jp/lyric.php?song=170573
人間の弱さへのまなざしがあるから、例えば「婚期を逃した樹木希林と川谷拓三がジタバタする純愛ドラマ」(ちょっと愛して)が成立するゆえんである。
山田太一ドラマ「ちょっと愛して」放送は1985年、トレンディードラマ前夜。花へんろ、家族ゲーム、わるいやつら、ポニーテールはふりむかない、金妻、ふぞろいの林檎たちII、映画会社の息吹がまだ残っている時代。
ともあれ、
現役バリバリの山田太一。かたや鬼籍に入られた吉野弘、菅原克己、高田渡。幽霊との交友録は、のちの世代に託される。