第359回 意外と面白かったポッドキャスト 論(5)〜終りに見た街
よく「今の時代にこそ観るべき」と挙げられる作品があり、あらゆる戦争映画、例えば地獄の黙示録、はだしのゲン。
- 作者: 山田太一
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- 発売日: 2013/06/06
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山田太一「終りに見た街」(1982)は、ファンタジー。タイムスリップもの。1980年代のニュータウンに住むファミリーが1943年に。親はもちろん戦争の愚かさを子供に説く。しかしその時代に身を置く子供たちは、80年代のステレオやバーガーやアイドルに夢中になっていた子供たちですら、戦時中の雰囲気に飲み込まれ親を批判する。「みんながんばってるのになんでお父さんは日本が負けるなんて言うの!?」と泣きながら訴える。
同じくタイムスリップした中学生、低学歴のヤンキーは、誰よりも熱心な愛国少年に変貌していた。
親の圧倒的な無力感。
ストーリーのポイントは3.10東京大空襲。
南方(サイパン)からB29がやってくる。
ズシーン‥ ズシーン‥
爆弾の音
ゴジラも南海からやってくる。
- 出版社/メーカー: バンダイ
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東京が火の海になる前に、親たちは街頭で避難を呼び掛けるも、官憲や自警団に殴られる。
これは、
「今の時代にこそ観るべき」というより、現在進行形の2014年10月そのもの。
戦争であれ何であれ、社会全体のムードが人を規定してしまう「気持ち悪さ」が描かれる。
SFとは、虚構を借り現実を描くジャンルで、山田太一の小説にSFが多いのも納得。
「終りに見た町」は、2014年4月、NHKラジオ第一放送でラジオドラマとして放送された。