偏見おじさんの 知的な痴的な偏見エッセー

@偏見おじさん said「偏見」という言葉に対する偏見を一旦忘れて。 偏見=物事のひとつの見方という立場から始めないと、何も始まらない。

第387回 TOKYOメロロ文学館 論〜切符がみた夢(ポエム)

http://www.metrocf.or.jp/art/bungakukan_poster.html

ぼくは切符。

子供や学生、大人はもちろん、おじいちゃん、おばあちゃんまで、毎日毎日、ぼくがお供する。

外国人だって、ぼくを買うんだ。
TICKET FOR なんて言って。
オリンピックは、もう少し。

おばちゃんは、買うのが遅い。

PASMOくんが登場してから、ぼくの活躍は減ったけど。
毎日毎日、駅から駅へ。働いている。

東京メトロだいすき (「鉄おも!」別冊)

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ぼくは切符。

失業者や犯罪者、変態はもちろん、革命家、賭博士まで、毎日毎日、ぼくがお供する。

ホームレスだって、ぼくを買うんだ。
オリンピックがきたら、行政代執行で、TOKYOから追い出されるかもしれない。

ある日、
両手のふさがった女の子が、ぼくをくわえた。

おだんごヘアーでチャキチャキの、切符のいい女の子。

磁気を帯びたぼくの体はビリリ。
熱くなり、膨張。赤面。スピード違反だ赤切符

女の子はどこ吹く風。涼しい顔でぼくをくわえている。

もうダメだ。

爆発する。

最後まで、お供したかった。

「ンッ」と結んだ薄い唇のその奥に、飲み込まれて意識が遠ざかる今際の際。
降車駅の改札口に、ぼくは確かに吸い込まれていった。