第346回 忘れ得ぬ人々 論(2)〜深夜のコンビニを襲撃する女3人組
山梨都留インターを下りると、溶岩の大地に赤とオレンジと緑に彩られた建物が藤壺のようにへばりついている。おれはそこで深夜勤をしていた。セブンイレブンである。
富士山溶岩玉砂利 1キロ (約20mm?40mm(長辺40mm前後で厚みが20mm位の大きさの砂利))
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15年前。まだ酒もたばこも取扱いなし。店長は潰れたおもちゃ屋の倅。土地持ちの40ほどの中年。自分を色男と思ってるフシがあったが実際は郷ひろみを上九一色村に10年間野晒しにしたような、無駄に彫りの深い顔をしたヘビースモーカー。たばこをスパスパやりながら「◯◯くぅ〜んん」と粘っこい電話をしてくるのだ。エロ本の棚が充実してないことが男性バイト陣からグチられていた。たぶん、まだ居ると思う。
時給1000円と割が良く暇な仕事を終え朝8時から飲む「お疲れのビール」は、特別で贅沢な味だった。贅沢な時間といえば、昨今、「Premium Moltsプレモルだプレモルだ」と有難がって飲酒する傾向があるが、本来スペシャルな時間というのは「与えられる/買わされる」ものではなく、自分でつくるものなのだ。
- 作者: 山田太一
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- 発売日: 1987/04
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さて、別のシフトで貫地谷しほり似の学生がいた。表ではわかりやすいぶりっ子。バックヤードではケータイ片手にチェーンスモーキング。おれが熱っぽくそいつの話をしていると、暇なので、決まってあいつはやりまんだからやめておいた方がいいと言われた。そこを含めてのことだったのだが、結局すぐに辞めてしまった。
- 作者: 土井文雄
- 出版社/メーカー: ワニブックス
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また、3時頃に来店する水商売帰り風のお姉さんは必ず「エビマカロニグラタン」を「あっため」で頼むのだった。ケバケバしいところはなく、品を秘めたところがあるという印象を持ったのは、買いかぶりだろうか。熱々グラタンをヤケドせずにレンジから茶色いビニールに移せるようになった頃には、おれが辞めてしまった。
深夜食堂 コミック 1-12巻セット (ビッグコミックススペシャル)
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さておき、「想い出づくり。」の女性3人組から連想した「忘れ得ぬ人々」は、明け方にワゴンRで乗りつける女性3人組。例えるなら石原真理(子)、手塚理美、中島唱子といった凸凹トリオ。ろう学校の生徒だろうか。手話の会話が秘密めいていた。とても親密そうにきゃぴきゃぴしながら、Cream Collonやジャがリコやなっちゃんをおれにねだる。なぜこの時間に。どこから来てどこに向かうのか。今でも仲がいいのか。